顔合わせ当日の朝、私は自分の部屋の鏡の前に座った。
カラーコンタクトを入れ、パウダーで顔に影を入れ、ハイライトで光を集める。
真白さんの肌は、透き通るように白い。
自分の肌を陶器のお人形みたいに整えて、目元のラインを真白さんらしい「キリッとした形」に寄せていく。
メイクをしているときの私は、いつも凪いだ海のように落ち着いている。
ブラシのやわらかい感触。肌に色がのっていく瞬間。それだけに集中していると、余計な不安が消えていく。
だけど今日は、違った。
ブラシを持つ手が、いつもより少しだけ重い。
これが終わったら、「嘘」をつきに行くんだ──その事実が、喉の奥につかえたまま消えなかった。
やがて、鏡の中に「知らない少女」が完成した。
「……本当に、真白さんになっちゃった」
目が大きくて、鼻が高くて。どこを探しても、地味な中学生の「結城陽葵」はいない。
だけど、鏡の中の私と目が合った瞬間、胸がチクッと痛んだ。
どんなに完璧に化けられても、中身まで消えてなくなるわけじゃない。
鏡の向こうで、本当の私が「苦しいよ」と泣いている気がした。
私は少し震える手で、道具をケースに戻した。
それから私は真白さんのお母様と合流し、車で西園寺家へ向かった。



