「真白さん、一つ聞いてもいいですか。目元に、ハイライトは入れてます?」
「ええ、ごく薄く」
「目頭の内側に少し足すと、視線が自然と和らいで見えるんです。今おっしゃっていた『ほどよく穏やかに』の感じに、メイクで近づけられると思って」
真白さんが、目を丸くした。
「……なるほど。やってみてもらってもいい?」
「もちろんです」
ポーチからブラシを取り出し、真白さんの顔を正面から見る。
整った顔立ち。目元のラインが強い分、少し近寄りがたい印象がある。
ハイライトを内側に入れるだけで、その強さが柔らかさに変わる。
自分のフィールドに入った途端、さっきまでの緊張がすっと引いていく。ブラシを動かす手だけが、正直だった。
「……どう?」
「すごい。本当に、目元の雰囲気が変わったわ」
真白さんが鏡を覗き込んで、感心したように呟いた。その顔が、少しだけ柔らかくなっている。
さっきまでの「完璧なお嬢様」じゃなく、ただの女の子みたいに。
鏡越しに目が合って、真白さんが照れたように笑った。こういう表情をする人だったんだ。
「言葉遣いはね、テレビのアニメに出てくるお嬢様みたいにかしこまりすぎても不自然だから。丁寧な敬語を心がければいいわ」
「はい……」
「あ、そうだ」
真白さんが、突然手を止めた。



