偽りのお嬢様〜不器用な御曹司は、素顔の私を離さない〜


案内された応接室で、真白さんによる「特訓」が始まった。

「まず歩き方から。足音を立てないで、すっとこう……」

真白さんが立ち上がり、音ひとつ立てずに部屋を横切ってみせた。おそるおそる真似してみる私。

「うーん。足首が固いわ。もっと、足の裏全体を使う感じで」

三回目の挑戦で、真白さんが小さく頷いた。

「よし、次はティーカップ。指を三本そろえて、こう持つのよ」

「こう……ですか?」

「持ち方はいいわ。ただ、手首がちょっと惜しい。もう少し内側に、優雅にね」

言われるままに、手首を動かす。

なるほど。関節の角度を数ミリ変えるだけで、見た目の印象がガラリと変わる。

アイラインの角度をほんの少し変えるだけで、顔の印象が劇的に変わるのと同じだ。

「あと、視線の置き方も大事よ。下を向くと自信がなさそうに見えるから、常に少し遠くを見て。具体的には、相手の目と目の間のあたりを」

「目と目の間、ですか」

「そう。真正面から目を合わせすぎると、かえって圧が出るの。ほどよく穏やかに、でも芯を持って」

意識して、真白さんの眉間のあたりに視線を落ち着かせる。

「……そう、その感じ。自然よ」

視線ひとつで、印象がこんなに変わるのか。ふと思いついて、私は口を開いた。