偽りのお嬢様〜不器用な御曹司は、素顔の私を離さない〜


顔合わせまでの数日間。私は放課後、如月邸で真白さんになりきるレッスンをすることになった。

特訓初日。真白さんに連れられて如月邸を訪れた私は、開いた口がふさがらなかった。

門を入って視界に広がったのは、手入れの行き届いた広大な庭。

ゆるやかな曲線を描く小道の両脇に、丁寧に刈り込まれた木々が並んでいる。

その奥にそびえ立つのは、白い壁と大きな窓が特徴的な洋館風の建物。

まるで映画のセット──ううん、これが真白さんの「現実」なんだ。

「おかえりなさいませ、お嬢様」

玄関では、黒いスーツを着た年配の男性が深々と頭を下げた。

本物の執事さんを目の前にして、私は足がすくみそうになる。

黒塗りの高級車で登校する生徒が当たり前の星ヶ丘(ほしがおか)学園中等部で、私はシングルマザーの母を持つ特待生として通っている。

同じ学校にいるのに、こんなにも世界が違うなんて。

「うちは老舗の高級ホテルチェーン『如月ホテルグループ』を経営してるの。全国に30以上のホテルがあるから、お嬢様教育も人一倍厳しくて……」

「30以上……」

思わず繰り返すと、真白さんは「そうよ」とさらりと言った。

それだけで話が終わってしまうのが、かえって現実味を増した。