美人秘書はCEOのお気に入り

サラはサンフランシスコに帰りたくなった。父と母に会いたくなったのだ。

サンフランシスコに飛んだサラは父と母のお墓に花を供えて二人に長い話を聞いてもらった。

そしてもう少ししたら日本に行ってこようと思うと報告したのだが、それだけで少し前向きになれた気がする。

”本当はお母さんと行きたかったわ”と少し涙目になりながら、拗ねてみた。

その後、自分たちの住んでいた家に寄ってみる事にした。

両親のお墓に参るといつもその後ここに来たくなるのだ。

自分が一番幸せだと思える時期を過ごした家、そして絶望を知らされた家でもある。

思い出の多い家にいる事ができなくて父が一生懸命働いて母の為に手に入れた家と母が丹精込めて作り上げた庭を、手放してしまった罪悪感もあった。

あの時はそうしないと生きていけなかった。

サンフランシスコから、この家から逃げ出さずにいられなかったのだ。

なのにまたシアトルから愛するローランドから逃げ出そうとしている弱い自分。

母の国日本に行けば何か変われるだろうか?

人を愛することでこんなにも気持ちが弱くなるのが情けなかった。

母の愛した庭は、相変わらず美しく整えられていた。

色々な花が咲いていて薔薇の小道も健在のようだ。

裏庭は小さな通りに面していて、そこから様子がうかがえるのだ。

車が通れる程の道幅はないが、子供の遊び場にはもってこいの通りになっている。

サラもネリーナと良くここで子供の頃に遊んだものだ。

自転車の練習をしたのもここだ。

補助輪を外した時には、父親が後ろを抑えて一緒に走ってくれた。懐かしい思い出だ。

夕暮れの今、窓にも温かい光がともり家族を思い庭を整え皆が心地よく過ごせるように気を遣う優しい母親がいるようだ。

サラは自分の育った家に、今でも温かい家族が住んでいてくれるのを嬉しく思った。

サラには二度と手に入れられない暖かな家庭が自分の暮らした家に根付いていることが心底嬉しかったのだ。