美人秘書はCEOのお気に入り

サラはシアトルのアパートの整理をし始めたが、萎んだ風船は使い物にならなかった。

ローランドからは何度も電話が入っていたが、話す気になれず出る気になれなかったラインも読んではいない。

サラは親友のネリーナに助けを求めた。

ネリーナに会ってローランドが婚約した事、ローランドにサラはふさわしくないのはわかっているけれど、結婚したローランドの側に居て秘書を続けるのは辛すぎる。

結局自分の気持ちに蓋をすることができなくてローモアカンパニーを辞めてきたのだと言って、ネリーナに抱きしめられて泣き続けた。

ネリーナは1歳の男の子マックスの母親になっていた。

時々遊びに来るサラにもよく懐いていて、サラはぎゅっと抱きしめて子供特有の甘い匂いを味わって癒された。

マックスはサラの頭をよしよしと撫でてくれて、”いちゃいの飛んでいけ~”とつたない言葉でサラを励ましてくれた。

マックスとネリーナに励まされてサラは泣き止んだ。

そしてネリーナに“ここに居るのは耐えられないからロスかシスコにまた逃げ帰ることになるわ“と自嘲気味に話した。

4年位前にロスからここシアトルに逃げてきたのだ。そして今度はまた逃げ出すことになる。

自分はいったい何をしているのかとサラは弱い自分をどうしても許せなかった。

「そんなに自分を責めないで、しばらくはゆっくりしたら?」と言ってくれた。

サラは泣きはらした目で、ネリーナと子供を見つめながら

「そうね。でも家でじっとしていても嫌な事ばかり考えちゃうわ」

「じゃあ日本に行って来たら?日本に行きたいってずっと言っていたじゃない。由美は忙しいけれどサラが言えば一緒に行ってくれるかもしれないわよ」

「日本かあ、そうね。ローモアカンパニーを辞めたらすぐにどこかで働かなくっちゃって思っていたけど、2~3ケ月位何もしなくても暮らしていける位は貯えもあるから日本に行ってみようかな」

「そうよ。そうしなさいよ。今まで走り続けてきたんだから、少し休んでもいいのよ。むしろ休むべきなのよ。それに日本に行ってみれば何か新しい事に出会えるかもよ」

ネリーナは新しい出会いがあるかもとは言わなかった。

サラにとってローランドはそんなに簡単に忘れられる人ではないと知っていたからだ。

ネリーナに励まされ、サラは日本に行くと言う新しい目標ができたことで少し元気を取り戻せた。

萎んだ風船に少し空気が入ったような気がした。親友ってありがたい。