美人秘書はCEOのお気に入り

サラは昨日会ったばかりのCEOの秘書になり、さすがに困惑することもあるがCEOの人柄やサラを気遣ってくれる優しさにこれならやっていけそうだと思いながら、広いCEOの部屋を見まわした。

サラのアパートがすっぽり入るくらい広い。ここでサラは生活ができそうだ。

キッチンもあるしシャワーは下のジムを利用すればいい。L型のソファーは寝心地もよさそうだ。

そんな馬鹿な事を考えながらテーブルに持ってきてもらった定食とサラの作ってきたお弁当を並べた。

椅子に座ったCEOはサラの弁当に興味津々だ。

サラのうちでは母が日本人なので、夕食はほとんど和食だった。

朝もお味噌汁と炊き立てご飯が出るときもあった。

サラは日本には行った事が無いけれど、和食については作法や懐石など改まったコース料理の事など母や由美に教えられた。料理も完璧だし和食が大好きだ。

学校には食堂があったので、お弁当は持って行かなかったが、遠足などの時には母は中に具をいっぱい入れたライスボールを何個か作ってくれた。

中国人の子は中華おこわや春巻きなどを持ってきたし、メキシコ人の子はタコスを持ってきたり、学校は人種の坩堝だった。

なので、CEOがそんなに和食の弁当が珍しく思うのが不思議だった。

超セレブなのだろう。こんな日本の下町の家庭料理なんか目にしたことも勿論食したこともないに決まっている。

でもCEOはサラのお弁当を美味い美味いと言ってほとんど全部ひとりで食べてしまった。

食事しながら打ち合わせするんでは???

仕方がないのでサラはレストランの定食を食べた。

それからは、サラがお弁当を持ってくると必ずCEOに交換させられた。

なので自分も食べたいときは2個お弁当を作っていく事にしたのだった。

CEOはその内にお弁当が食べたいとリクエストするようになり、2カ月もしないうちに週一で2人分のお弁当を作るようになるのをサラはまだ知らない

とにかくCEOはサラの作る庶民の和食家庭料理が、気に入ってしまったらしい。

その後デザートを食べてコーヒーを飲みながら、新しく就航させるフェリーの話になった。

「サラはビクトリアに行った事があるだろう?どうだった?初めて乗った感想は?」

「どうして行った事があるって知っているんですか?」

「う~,ごめん。実はブッチャートガーデンでサラを見たんだ。ダイニングで楽しそうにアフタヌーンテイーを食べている所も見たし、バラ園で今度は泣いているサラも見たんだ。だから昨日ここでサラが部屋に居るのを見てびっくりしたんだ」

「まあ、それじゃあ私にハンカチを下さったのはCEOだったんですね」

そう言うとサラはバックの中から丁寧にラッピングされてリボンも掛けられた物を取り出して、ローランドに渡した。

「ありがとうございました。とても高価なハンカチでいつかお返しできるかもと思ってずっと持ち歩いていたんです。CEOのおかげで涙も止まって助かりました。これお返しします」

「だめだよ。サラにあげたんだからサラが持っていてほしい。ほらこうするとかっこいいよ」

そう言うとハンカチをサラのバックの取っ手に結んでくれた。確かにかっこいい。

そこらへんで買ったバックがブランドのハンカチを持ち手に巻くだけでランクアップした気がする。

それを聞いて、大げさだなあと言ってローランドは笑っていたが、本当にバックが豪華に素敵になったのだ。

「でもなぜ泣いていたんだ?それが気になって君の事を忘れられなかったんだ」

「まあ、気にかけて頂いてありがとうございます。実はあの時両親のハネムーンを追いかけていたんです。両親はブッチャートガーデンに行ってバラ園に感激したと言ってました。アフタヌーンテイーも食べたそうです。バラ園でバラを鑑賞していたら、ちょうど高齢のご夫婦が手をつないで笑顔で話しながら歩いてきたんです。それを見たら両親が生きていたら父が仕事をリタイアした後あんな風に仲良く手をつないでまたここを訪れる事が出来たのにと思ったら、知らずにボロボロ涙をこぼしていたんです。もう5年近く経つのでこの頃は、泣かずに二人との楽しい日々を思い出せていたんですが…とても仲の良い夫婦だったんです」

「そうか、そんな旅だったんだね」

「ええ、前の日はダウンタウンの両親がハネムーンで泊まったホテルにも泊まったんです。そこで二人の30年前の書き込みを見せてもらったりお庭で撮った写真も貰ってきたんです。本当に若い二人の幸せそうな姿を見て、二人の事はその時少し昇華させることができました。母は庭付きの小さな家が欲しかったようでそのお庭を自分で造りたいと書かれていました。そして父はその夢をかなえるために頑張るぞって…実際に父は母に裏庭の付いた小さな家をプレゼントしたんです。そこでは母は幸せにガーデニングをしていました。近所でも有名なお庭だったんですよ」

なぜかサラはCEOにそんな事まで話してしまったのには自分でも驚いた。

サラはそんなプライベートな事柄を気軽に話すタイプではないのだ。