第5部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない


「……それだけじゃありません」

低く、重い声でセナが言った。

「お嬢様」

その呼びかけに、胸が嫌な予感で締めつけられる。

セナは一枚の資料を取り上げ、無表情のまま告げる。

「ここには、はっきりと記されています。
――お嬢様の力も、利用するつもりだったと」

「……え……?」

「ガイルでは成し得なかった“完全な器”。
それをディラン殿下で完成させ、
さらに――不老不死を実現するために」

セナの視線が、まっすぐに私を射抜く。

「そのための“鍵”として、
お嬢様を使う計画だったのでしょう」

言葉が、胸の奥に突き刺さる。

私の力。
ディランの存在。

すべてが――
最初から、歪んだ目的のために用意されていた。