「……なんだ。甘やかしてほしいなら、そう言ってくださいよ」
セナがふっと笑い、一歩近づいてくる。
自分の首に巻いていたマフラーを外すと、そのまま私の首にぐるぐると巻きつけてきた。
……なにしてるの、この人。
「ねぇ、なにこれ」
問いかける間もなく、今度はほっぺたをむにょーっと引っ張られる。
「ねぇ、セナ」
「可愛い可愛い。大福みたいで」
――イラッ。
「なんだそれ!!」
思わず声を張り上げると、セナはようやく手を離し、少しだけ真面目な顔になった。
「お嬢様は、そうやって笑って、前を見ている方がいい」
「……むっ。後ろ向きたいときだって、あるし」
口を尖らせると、セナは柔らかく目を細めた。
「ええ。そういうときも、ありますね」
そして、ほんの少しだけ距離を詰めて言う。
「じゃあ、そんなときは――俺が、お嬢様の前に立ちましょう」
迷いのない笑顔。
胸の奥が、じんわりと温かくなる。



