ディランに促され、部屋へ入る。
扉が閉まった瞬間、そっと腕を引かれ――
気づけば、ソファに並んで座らされていた。
「ち、近くないですかね」
思わず身を引こうとすると、
「そう?」
ディランは悪びれもせず、首を傾げる。
「君の声が、ちゃんと聞きたくて」
そう言いながら、指先が首元へ伸びる。
チョーカーの留め具に触れ、す、と外された。
「……っ」
ひやりとした空気が喉に触れ、思わず息が詰まる。
「キスしたいが……」
一瞬だけ、間を置いて。
「男装だと、違和感あるかな」
「い、今はしないですよ!」
慌てて否定すると、
「関係ないか」
ふっと柔らかく笑う。
「君は、君だ」
その言葉とともに、手が伸びてくる。
「いやいや、待って!」
慌てて制止すると、
「安心しろ。今回は無理矢理じゃない」
落ち着いた声で、さらりと言う。
「してほしそうな顔をしてただけだ」
「してません!」
「本当に?」
「ほ、ほんとです!」
じっと見つめられながら言い切ると、
「……そっか」
ディランは少しだけ残念そうに息を吐いた。
「それは、残念だな」
ほっとした――その瞬間。
「ちゅ」
頬に、軽い感触。
「――なっ、何するんですか!」
「頬ならいいかと思って」
「よくないです!」
即答すると、
ディランは肩を揺らして笑った。
「相変わらずだな」
からかうようでいて、どこか優しい目。
そして、ふっと声が落ち着く。
「でも……こうして君に触れると安心する」
その言葉は、甘さよりも温度があった。
胸の奥が、じんわりと熱くなる。



