ひょこっと顔を出した。
「……なんだ。レオか」
ディラン殿下が、こちらを見る。
その目は冷静で、状況をすべて見透かしているようだった。
「聞いていたのか?」
「す、すみません……!」
慌てて頭を下げる。
「別に、聞かれて困ることではないさ」
淡々とした声。
責める気配はない――だが、温度もない。
「それで」
殿下の視線が、ローゼとスーザ、そして拘束された刺客へ向く。
「ローゼはティアナへ嫌がらせをしていたし、刺客への依頼も把握していた。
スーザは刺客にティアナを脅すよう依頼し、
刺客はそれを実行した」
まるで罪状を読み上げるように、淡々と。
そして――。
「刺客についてだが……レオ。お前はどうしたい?」
「え……?」
「大事なティアナの命を狙った者だ」
一拍。
「……殺すべきか?」
「へっ!?」
素っ頓狂な声が出た。
(い、いきなり重っ!?)
「い、いや……!」
慌てて首を振る。
「お嬢さん、そんなこと望んでません!」
「この人も……」
刺客を見る。
「殺す気はなかったって、言ってましたし!」
必死で言い募ると、
ディラン殿下はしばし黙り込んだ。
その沈黙が、やけに重い。
呼吸すらためらうほどの圧がある。
(……間違ったこと、言ってないよな?)
やがて。
「……そうか」
短く息を吐く。
その表情は冷静で――
どこか、深い疲労を滲ませていた。
「確かに、ティアナは命を奪うことを良しとはしない」
そう言ってから、
もう一度、刺客に視線を向ける。
「だが」
声が、わずかに低くなる。
「それで済む話かどうかは、別だ」
(……あ)
(この人、やっぱり覚悟が違う)
軽い気持ちで首を突っ込んだわけじゃない。
その覚悟の重さが、ひしひしと伝わってきた。



