第5部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない

セナと二人きりになる。
吐く息が白い。……もう冬なんだな。

「……それで、どうして喧嘩を?」

「喧嘩ってほどじゃないよ」

そう答えながら、つい視線を逸らしてしまう。

「アリスやルイ、テオには話して……俺には言えませんか?」

「いや、テオには言ってないんだけど」

……なんで知ってるんだろう。

「なんかさ、セナ。前はあんまり聞いてこなかったよね。今日はずいぶんグイグイくるじゃない」

少しだけからかうように言う。

「はい。お嬢様が最近、ズカズカ踏み込んでくるので」

一拍置いて、

「俺も、それを見習おうかと」

「ちょっと! なんか悪意あるんだけど、その言い方!」

むっとして、私は意を決して手招きした。

「はいはい」

苦笑しながらも、素直に近づいてくるセナ。
その耳元に、私はそっと顔を寄せて、小声でこそこそと話した。

「……それは」

セナが少し考えるようにしてから言う。

「殿下に同情しますね」

「えっ!?」

「でも」

また一拍。

「お嬢様の言い分も、わかります。……半分くらい」

「半分!?」

思わず声が裏返る。

――セナが、私の味方じゃないなんて。

「なんか、セナ厳しー」

そう言って、頬をぷくっと膨らませた。

セナは、そんな私を見て、ふっと優しく目を細めた。