第5部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない

ここなら中の様子見えるし、声も聞こえる。

やっぱりだ。
殿下たちだけじゃない――。

「まず――」

ディラン殿下の声が響く。
低く、抑え込んだ怒気を含んだ声だ。

「君が、ティアナを殺そうとした刺客だな」

「――っ!?」

思わず息が止まる。

(お嬢さんを狙った刺客!?
 そいつがここに!?)

「ち、違う……!」
男の声は焦りに満ちていた。

「殺すつもりはなかった! ただ脅すだけのつもりだったんだ!」

「……それで?」

ディラン殿下の声がさらに冷え込む。

「ローゼ嬢。
 君は彼に、それを頼んだのか」

「ち、違いますわ!」

ローゼの声は震えていた。

「ご誤解ですの! わたくしはそんな……この方が勝手にやったことですわ!」

怯えたように首を振るローゼ。

その瞬間――。

「確かに、この女からは依頼されてない。
 そっちの女の方だ」

刺客が指し示した先で、もう一人の令嬢が顔を伏せた。

そして刺客は、はっきりと言い切る。

「そこのスーザって女で間違いない」

「――は?」

頭の中で何かが弾けた。

(なんだってぇぇぇ!?)