第5部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない


「ジョルジュ陛下は、ディランの祖父よ。……家族なの」

そこで一度、言葉を切った。

「証拠もないまま疑って、不安にさせたくない」

短いけれど、揺るぎない本音だった。

「……まあ、わかるけどさ」

レオが、少し不満そうに口を尖らせる。

「もしかして……」

セナが一歩踏み出し、真っ直ぐにこちらを見る。

「面と向かって話せない理由でも、ありますか?」

逃げ場のない視線。
さすが…鋭い。

その問いに、アリス、ルイ、そして――なぜかテオまでが、同時に視線を逸らした。

「……ちょっと、喧嘩中」

観念してそう言った。

「え!? 喧嘩ですか!? だめですよー、仲直りしなくちゃ!」

レオが勢いよく食いつく。

「まあまあ、レオちゃん。落ち着いて」

ルイが肩を軽く叩いてなだめる。

「そうです。むしろ、このまま婚約破棄でもいいと思います」

アリスがさらりと言い放つ。

「それ名案、アリス。あいつが悪い」

誰かが続け、場が一気に騒がしくなる。

――わちゃわちゃし始めた。

「と、とにかく!」

私は慌てて声を張った。

「潜入するために、計画つめさせて!」

その一言で、場の空気がようやく落ち着きを取り戻した。