合宿3日目。
訓練場に、ざわりとどよめきが走った。
ディランが――木剣を手に、直々に姿を現したのだ。
「せっかくだ。今日は私が、皆の相手をしよう」
その一言で、場の空気が一段と引き締まる。
(これは……!)
私は勢いよく前に出ようとしたが、セナが慌てて腕をつかんだ。
「ちょ、怪我しますって!」
「えー! いいじゃん、やりたい!!」
「ダメですって!」
「だってさ、私が相手だと、あの人絶対本気出さないじゃん。
こういう時しかできないんだって!」
「だからって……!」
小声で押し問答していると――
「……何をしている?」
低く落ち着いた声が、すぐ近くから降ってきた。
(――まずい)
反射的に背筋が伸びる。
ディランが、いつの間にか目の前に立っていた。
「やあ、セナ。アレンに、ロベルトも」
3人は一斉に姿勢を正し、深く頭を下げる。
そして、彼の視線が私に向いた。
「……君は、見かけない顔だな」
(来た……)
「期待の新人、ソラです。私の遠い親戚になります」
セナが、何でもないことのようにさらっと言う。
(そういう設定ね……了解)
「はい。ソラといいます。よろしくお願いします」
声色も変え、深く頭を下げる。
“親戚”という設定なら、まず怪しまれないはず。
「そうか……」
ディランは一瞬だけ私を見つめ、ふっと柔らかく笑った。
「では、どうだい? 私と軽く手合わせでも」
「い、いえ、それは――」
セナが慌てて前に出ようとした、その瞬間。
「やります! ぜひ、やらせてください!」
自分でも驚くほど、元気よく声が出た。
(今しかないでしょ!)
視界の端で、アレンとロベルトがそろって
「あー……」という顔をしている。
(その反応、やめて)



