「え、なんだよ〜!
そこは“そうです”とか“違います”とかあるだろ!」
ぐいっと距離を詰められる。
(ちょ、近い近い近い!)
「護衛騎士ってことはさ、
ティアナ様の一番近くにいるんだろ?
だったら色々知ってるよな?」
「……さあ、どうでしょう」
セナは表情ひとつ変えない。
だが、私にはわかる。
完全に“警戒モード”に入ってる顔だ。
「えー、教えてくれよ!
殿下ってどっちが本命なんだ?」
「いや、だから……」
セナが困ったように眉を寄せる。
その横で――
「ソラ、お前はどう思う?」
突然、セナが話題をこちらに飛ばしてきた。
(やめてぇぇぇぇ!!)
「えっ、俺!?」
「そうだよな!新人でもさ、見てたらわかることあるだろ?
ティアナ様ってどんな人なんだ?」
騎士団員が首を傾げる。
(どんな人って……本人だよ!!)
心臓が跳ねる。
背中に冷や汗がつーっと流れる。
「え、えっと……」
必死に“ソラ”としての顔を保ちながら、
言葉を探す。
「……頑張っておられると思います」
自分のことを評価するって…なんの拷問よ。
「へぇー!」
「殿下とはどうなんだ?」
「ローゼ嬢とは?」
「どっち派?」
(質問が増えてるぅぅぅ!!)
完全に逃げ場がない。
セナが横目でこちらを見る。
“落ち着いてください”という無言の圧。
(いや無理だろこれ!!セナがこっちに話題向けるから!!)
私は喉を鳴らし、
なんとか笑顔を作った。
「……新人なんで、ほんとにわからないです」
「つまんねー!」
「でもまあ、ティアナ様推しだな!おれは」
「俺も俺も!」
話題がまた勝手に盛り上がっていく。
私は心の底から安堵した。
(……危なかった……!)



