第5部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない


「今日から1週間、強化合宿を行う。
 心身ともに鍛え、王国創立記念式典を――大いに盛り上げよう」

ディランはそう告げ、一人ひとりを見渡した。
その視線には、王国を背負う者としての重みが宿っている。

その後ろに控えているのは……レイさんだ。

(相変わらず、いい筋肉だな……)

思わず視線が吸い寄せられ、慌てて誤魔化す。

――幸いにも。

合宿はこの2日間、大きな事件もなく順調に進んだ。
潜入が露見することもなく、騎士団の空気にも少しずつ馴染んでいく。

ティアナにも王国のパーティーの招待状が随分前に届いていた。王国近くには、すでに部屋を確保してある。

作戦会議を開いたり、情報を整理したりするために、
あらかじめ王国の直接的な支配から外れた場所に用意しておいた、いわば“隠れ家”だ。

(こういう時のための保険、ってやつだね)

騎士として潜入する“ソラ”。
貴族として表に立つ“ティアナ”。

その2つを行き来する日々が、静かに――しかし確実に動き始めていた。