第5部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない

「……お。じゃなくて……ソラは、平気ですか?」

言い直しながら、アレンがこちらをうかがう。

「うん。まだまだいけるよ」

「本当に体力お化けですね……」

セナが感心したように呟く横で、

「すごいだろ?」

なぜかロベルトが胸を張った。

その瞬間――

周囲が、ざわりと揺れた。

「殿下ですね」

「わあ……本当だ」

「なんか他所で見るとオーラあるな……」

ひそひそ声があちこちから漏れ、空気が一気に引き締まる。
セナ、アレン、ロベルトも自然と口をつぐみ、視線の先へ意識を向けた。

――まずい。

潜入していること自体はディランに伝えてある。
けれど、どんな姿で来ているかまでは話していない。

(バレたら……面倒、どころじゃ済まない)

でも、見た目も声も変えている。
大丈夫。落ち着け。

私は無意識に背筋を伸ばし、
周囲の空気に溶け込むように、そっと息を潜めた。