第5部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない

王国創立記念式典。
そして、騎士団合宿1日目。

私は――男として、ここに潜入している。

「セナ、私じゃなくて……、俺のことは……そうだな。ソラって呼んでくれ」

「それはまた、小説の主人公みたいな名前ですね」

「小説でヒロインとうまくいかなくて病んだ挙げ句、怪物になって討伐される役なんだけどな!」

「……相変わらず物騒ですね」

セナは小さくため息をついた。

「みんなも気をつけて。俺は“ソラ”だからな」

「了解です」

「わかった」

アレンとロベルトも素直に頷く。

広場には、各地から集結した騎士団がぎっしりと並んでいた。
鎧のきしむ音、号令、剣が風を裂く音――すべてが本気そのもの。

走り込み。
筋力訓練。
延々と続く素振り。

――これは、すごい。

さすが王国直属の騎士団。
どれも実戦を想定した、容赦のないメニューばかりだ。

(これ、本気でうちにも取り入れたいな……)

感心しながら、ふと隣を見る。

「……き、きついです……」

赤銅色の髪が、完全にしおれている。
顔色も悪く、今にも倒れそうだ。

「確かに厳しいが……少しだらしないぞ」

ロベルトが苦笑しながら、彼の肩を軽く叩く。

「う、訓練内容が想像以上で……」