「これ、アラン殿下に頼んで譲ってもらったの」
そう言って、チョーカーを指で弾く。
その瞬間、ふと記憶がよみがえった。
――以前、蝶の会に潜入したとき。
ディランはサーフェスになりすましていた。
顔だけじゃない。
声まで、完全に別人だった。
(あのときも、同じ違和感を覚えた)
あれは魔法というより……
**精密すぎる“調整”**だった。
交換条件と称して聞いてみたら、案の定だった。
知識も、人脈も、手段も持っている人。
そういう人にしか扱えない代物。
『ああ、それね』
軽い口調で、でもどこか意味深に笑って。
『声帯に干渉する魔宝石だ。本来は諜報用で、一般には出回らない』
『君が使うなら、問題ないだろう』
……まるで貸し出す本の話でもするみたいに、さらっと。
(ほんと、ディランもすごいけど……アラン殿下も規格外)
「なるほど……」
セナが納得したように息を吐く。
「アラン殿下が絡んでるなら、確かに性能は保証付きですね」
「でしょ?」
私はにっと笑う。
「だから今回は――」
チョーカーに触れながら、低く宣言する。
「完璧に“男”でいく」
その言葉に、一同が静かに頷いた。
危険なのは、誰より分かっている。
相手は――
王国のトップ。
でも。
(見過ごせるわけ、ないでしょ)



