第5部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない

「……じゃあ。お願いします」

気づけば、そう言って手を差し出していた。

一瞬の迷いもなく、ティアナ様はその手をぎゅっと握り返す。

「うん! よろしくね」

その温もりが、掌にしっかりと残った。

そこからの日々は、驚くほど早く、そして確かに変わっていった。

父の借金は肩代わりしてもらい、父は庭師として再び働き始めた。
前を向くようになり、酒の量も少しずつ減っていった。
エマとサラと過ごす時間も増え、2人は店で楽しそうに手伝ってくれている。

――そして。

新しく生まれた店、ブティック・グロウ。

“グロウ”は、輝くという意味。
私が作るドレスで、たくさんの人を輝かせたい。
そして何より――

たった一人、私に居場所をくれた人。
私を見つけて、引っ張り出して、手を離さなかった人。

ティアナちゃん。
あなたが誰よりも輝くためのドレスを。

私は、これからも作り続けていく。