第5部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない

「ルイ!」

軽やかに近づいてきて、くるりと一回転。

「じゃじゃーん。素敵でしょ?」

「……ええ。とても」

心からの言葉だった。

「ねぇ」

「なんですか?」

彼女は少し声を落とし、真剣な瞳で見つめてきた。

「私の、専属デザイナーにならない?」

「……へ?」

心臓が跳ねた。

「あのお店。あなたが、始めてくれない?」

――やりたい。
喉まで言葉が出かかる。

でも。

脳裏に浮かぶのは、借金の帳簿。幼い双子の妹たち。酒に溺れ、何もかも投げ出した父の背中。

今の仕事は安定している。確実に家族を養える。
ここでデザイナーになったとして――本当にやっていける?

「……無理です」

絞り出すように言った。

「やりたい。でも……」

視線を伏せる。

「借金があります。幼い妹たちもいる」

夢だけで生きられる立場じゃない。
その現実が、胸に重くのしかかる。

ティアナ様の前で、こんなにも弱い。