第5部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない

この任務が終われば
―私はまた、公爵家の騎士として戻る。

そう自分に言い聞かせながら、私は会場の警備に立っていた。今日はパーティーの護衛。華やかな会場の中で、私はただの影のように立つだけだ。

……まさか、とは思うけど。
彼女はいない、よね。

そんな淡い期待と不安が胸をよぎった瞬間だった。

「わあ……きれい」
「ティアナ様よ」

ざわり、と会場が波立つ。視線が一斉に向けられた先――

そこにいたのは、私が作ったドレスを身にまとい、微笑むティアナ様だった。

……ああ。
綺麗だ。
本当に、息を呑むほど。

「ドレス、どうされたのですか?」
「とても素敵なデザインですね」

次々にかけられる賛辞に、私は胸を撫で下ろした。よかった。ちゃんと通用してる。

「内緒です」

彼女は少し悪戯っぽく笑う。

「いま、口説き中なので」

――その視線が、まっすぐこちらを捉えた。

どきり、と胸が鳴る。
少女のはずなのに、その一瞬だけひどく大人びて見えた。