「で、――できた。」
小さく息を吐き、そっとドレスから手を離した。完璧だ。もうどこにも手を入れる必要がない。胸を張って差し出せる、そう思える一着だった。
私は迷わず伯爵家へ向かった。胸の奥は緊張でざわついていたが、足取りは軽かった。
「ドレス? あなたが……作ったものを?」
玄関先で声をかけると、使用人が怪訝そうに眉をひそめた。次の瞬間、鼻で笑われる。
「お嬢様のパーティーには、名だたる貴族の方々がいらっしゃるんですよ?」
ひそひそと囁き合う声が耳に刺さる。
「あなたみたいな、よく分からない方のドレスを……お嬢様が着られると思っているんですか?」
……それも、そうだ。
胸の奥がきゅっと縮んだ。住む世界が違う。私は何を勘違いして、舞い上がっていたんだろう。静かに踵を返そうとした、そのとき。
「待ってください。ルイさん、ですね」
呼び止められて振り返ると、そこにいたのはティアナ様の傍にいつも控えていた執事だった。私と歳はそう変わらないが、背筋が伸び、きちんとした佇まいの人だ。
「ユウリといいます。こちらへ」
丁寧にお辞儀をし、静かに案内してくれる。扉の先から、聞き慣れた声が弾むように響いた。
「あれ? ルイ、どうしたの?」
「ドレスが……完成しまして」
「え! はやい!! ありがとう!!」
ぱっと笑顔になり、勢いよく手を伸ばしてくる。
――が。
私は反射的にその手を避けてしまった。彼女の手が空を切る。
「……?」
不思議そうに首をかしげるその顔が、胸に刺さった。
小さく息を吐き、そっとドレスから手を離した。完璧だ。もうどこにも手を入れる必要がない。胸を張って差し出せる、そう思える一着だった。
私は迷わず伯爵家へ向かった。胸の奥は緊張でざわついていたが、足取りは軽かった。
「ドレス? あなたが……作ったものを?」
玄関先で声をかけると、使用人が怪訝そうに眉をひそめた。次の瞬間、鼻で笑われる。
「お嬢様のパーティーには、名だたる貴族の方々がいらっしゃるんですよ?」
ひそひそと囁き合う声が耳に刺さる。
「あなたみたいな、よく分からない方のドレスを……お嬢様が着られると思っているんですか?」
……それも、そうだ。
胸の奥がきゅっと縮んだ。住む世界が違う。私は何を勘違いして、舞い上がっていたんだろう。静かに踵を返そうとした、そのとき。
「待ってください。ルイさん、ですね」
呼び止められて振り返ると、そこにいたのはティアナ様の傍にいつも控えていた執事だった。私と歳はそう変わらないが、背筋が伸び、きちんとした佇まいの人だ。
「ユウリといいます。こちらへ」
丁寧にお辞儀をし、静かに案内してくれる。扉の先から、聞き慣れた声が弾むように響いた。
「あれ? ルイ、どうしたの?」
「ドレスが……完成しまして」
「え! はやい!! ありがとう!!」
ぱっと笑顔になり、勢いよく手を伸ばしてくる。
――が。
私は反射的にその手を避けてしまった。彼女の手が空を切る。
「……?」
不思議そうに首をかしげるその顔が、胸に刺さった。



