「……ここは?」
思わず足を止めて、呟いてしまった。
「空き店舗よ。私が買い取ったの」
まるで大したことじゃないみたいに、ティアナ様は言う。
「まだ中は整ってないけどね」
扉が開いた瞬間、息が詰まった。
店内には、装飾用の布がびっしりと並び、
新品の最新式ミシン、裁ちばさみ、糸巻き。
棚には、色とりどりのリボンやボタンがぎっしり。
――すごい。
気づけば、一歩踏み出していた。
ここは……宝の山だ。
指先が無意識に布へ伸びる。
質感を確かめるだけのつもりが、
頭の中ではもう、形が浮かび始めていた。
「ここ、好きに使っていいからさ」
背後から、あっさりとした声。
「一着だけ。私のドレス、作って?」
……なんてことを言うの、この子は。
正直、やりたい。
こんなに整った設備で、
こんなに自由に、
好きなものを作れるなんて。
胸の奥で、何かがうずうずと騒ぎ出す。
そんな私の心を見透かしたように、
彼女はさらに甘い言葉を重ねた。
「ここにある布も、何でも使っていいよ」
さらりと。
「他に作ったものがあったら、それも持って帰っていいし」
――だめだ。
これは完全に、落としにきてる。
視線をそらしながらも、
もう一度ミシンに目が吸い寄せられる。
……抗えるわけがなかった。



