第5部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない


「……いえ、私には無理です」

思った以上に、はっきりと言い切っていた。

素人が伯爵家のご令嬢のドレスを作るなんて——
そんなの、できるはずがない。

ああいうものは、名のある高級ドレス店に頼むもの。
私の出る幕じゃない。

「どうして?」

首をかしげたティアナ様が、不思議そうに問い返す。

「こんな素敵なデザインを描ける人、そういないわ。
勝手に覗かせてもらったけど……」

さらりと、迷いなく言い切る。

「これは、ちゃんと“形にできる人”のデッサンよ」

「……」

言い返せなかった。
こんな幼い子に、核心を突かれるなんて。

「それでも、無理です」

視線をそらし、立ち上がる。

「……失礼します」

これ以上ここにいるのが怖くて、私は席を離れた。

――そして翌日。

「こんにちは」

聞き覚えのある声。

「……どうして、またここに?」

「諦めてないので」

当たり前のように、しれっと言う。

「はぁ……」

思わず、盛大なため息が漏れた。