第5部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない


「……もし、あの人が何か悪さをしているのなら」

ディランは言葉を選ぶように、ひとつ息を置いた。

「俺は、孫として。そして――次期国王として、止めなければならない」

「絶対に」

エメラルドの瞳が、迷いなく前を見据えている。

「今回、俺は表立っては動けない。……祖父の目があるからな」

少し声を落とし、続けた。

「だから……君に、危険な役目を任せることになる」

その言葉に、私は一瞬もためらわなかった。

「それは、大丈夫です」

むしろ、自然に口をついて出た。

「一緒に、やりましょう」

対等に。
隣に立つ覚悟で。

ディランは驚いたように目を瞬かせ、それからふっと肩の力を抜いた。

「……ほんと、逞しいな」

小さく笑って。

「俺のお姫様は」

その呼び方に、胸が少しくすぐったくなる。

でも――守られるだけのお姫様じゃない。

そう思いながら、私は彼の視線をまっすぐ受け止めた。