第5部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない

「ティアナ」

振り返ると、ディランが立っていた。
光の反射を受けて、相変わらず眩しいくらいにキラキラしている。

「ディラン」

「素敵な演奏だったよ。さすがだ」

「ありがとうございます」

短い言葉なのに、胸の奥がじんわり温かくなる。

「アラン殿下は忙しそうですね」

ちらりと視線を向けると、
令嬢たちが花のように群がっていた。

「そうだな。
……君たちもよく来てくれたな」


ディランがユウリたちに視線を向けると、
皆が軽く会釈する。


「ティアナ、少し挨拶回りに付き合ってくれるか?」

「はい」

自然と差し出された手に導かれ、
私はディランにエスコートされながらアラン殿下の元へ向かった。


「やあ、ティアナ嬢。よく来てくれたね。
素敵な演奏だったよ」

アラン殿下は相変わらず余裕の笑みを浮かべている。

「ありがとうございます。
……大変そうですね」

「まあね。
弟派か私派かで、水面下で揉めていてね。
急に表に出てきて“私が国王です”なんて言えば、そりゃあ反発もあるさ」

軽い調子で笑うけれど、
その目の奥はどこか鋭い。

「私も、できることがあれば協力します」

そう言うと、アラン殿下は少し目を細めた。

「おや、それは助かる。
君のまとめてくれた資料、見たよ。
わかりやすくて本当に助かった。
……君を王国に置いておきたくなったよ」

「はは、ご冗談を」

「そう聞こえるかい?」

わりと本気の目だ。
こわい。

背筋がひやりとする。