第5部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない


伯爵家での日常は、驚くほど変わらなかった。
朝の空気も、廊下に差し込む光も、庭の花の香りも、以前と同じだ。

ただひとつ違うのは――
ジョルジュ陛下が亡くなったという知らせが、王国中に静かに広がったこと。
式は身内のみで執り行われたらしく、国全体がどこか沈んだ空気をまとっている。
ジョルジュは、散々なことをしていたが国の発展には大きく貢献してきた人物でもある。

次期国王については、アラン殿下派とディラン殿下派で意見が割れているらしい。
けれど、あの兄弟ならうまくやるだろう。
そう思えるだけの信頼が、いつの間にか私の中に根付いていた。


私はというと、足の怪我もすっかり治り、
ユウリとアリスは相変わらず有能で、
セナはさらに剣の腕に磨きをかけ、
テオはいつも通りゆるりと絡んでくる。
レオの太陽のような明るさも健在で、
ルイは店が忙しいけど、たまに顔を見せにくる。

そんな日常の中――

ガーデンで一休みしていると、ユウリが静かに告げた。

「そういえば……もうすぐアラン殿下の王即位式ですね」

「そうだね」

風が花を揺らし、柔らかな香りが漂う。

「ってか、それさ、護衛で任務依頼出てたよね?」

テオが私の髪を勝手にもてあそびながら言う。

「テオ、離れろ」

「いいじゃん。あいついないし」

「でも確かに出てましたね」

セナが真面目に頷く。

「俺も!手伝い担当で依頼されたよ!」

レオが元気よく手を上げる。

「私もです」

アリスも頷く。

「しっかりこき使われてるよねー」

テオが笑いながら肩をすくめる。

「そうすると、ルイも呼ばれるでしょうね」

ユウリが淡々と続ける。

「いや、あいつより兄のほうが人使い荒そう」

テオの一言に、全員が同時にうなずいた。

その光景が可笑しくて、思わず笑ってしまう。

こうして笑える日常が戻ってきたことが、
なんだかとても嬉しかった。