第5部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない


「なるほどね。
随分と弟が良い顔になった……これも彼女のおかげか。」

兄の言葉に、わずかに肩をすくめた。
断られるかもしれない――そんな不安が胸をよぎる。

「いいだろう……」

微笑む兄。

「本当ですか……?」

「ああ。ただし、条件がある。」

「なんですか?」

思わず身構える。
どんなことを頼まれるのか…。

「私のことをお兄様と敬い、月に一度は私との時間を作ってくれ。」

「は?」

俺は思わず素っ頓狂な声を上げた。


「ティアナ嬢だけずるいだろ。
私だって、可愛い弟を愛でたいのに。」

「待ってください、なんですかそれ。」

「ティアナ嬢に言われたんだよ。
『貴方も、ディランとよく似ています。
言葉が足りないところも、不器用なところも。
でも――大切に思っている気持ちだけは、本物です』って。」

「ティアナ……」

小さく息をのむ。
自分の知らないところで、そんな会話があったとは。

「だからちゃんと向き合いたいと思ってる。
もう一人では背負わせない。一緒に歩いて行こう。」

兄の真っ直ぐな言葉に、俺は視線を落としながらも、
静かに頷いた。

「……はい。」

「それと、これ。」

兄が差し出した小さな箱。
プレゼントだろうか。

「なんです?」

「ティアナ嬢に付き合ってもらって、お前のプレゼントを選んだんだ。」

「はあ……」

兄と出かけた日のことが脳裏をよぎる。
箱を受けとり、そっと蓋を開けた。