第5部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない

今後について……
ティアナとも、兄とちゃんと話すと約束した。
だからまずは兄と向き合うことにした。

「兄上」

「ディラン」

「身体、相当痛いんじゃないか? 起きて大丈夫か?」

心配してくれているらしい。
昔は嫌われていると思っていた。
“可哀想だ”と言われたあの言葉がずっと刺さっていた。

でも――それは俺の勘違いだった。
兄はずっと、俺を守ってくれていた。

「はい……大丈夫です」

「そうか」

「お願いがあります」

「……ああ、言ってみろ」

「次期国王に、兄上になっていただきたい」

そう言うと、兄は優雅に足を組み直した。

「へぇー、どうして?」

わかっていて聞いている。
兄は昔からそういう人だ。

「俺は国王の座に興味もないし、そんな度量もありません」

「そんなことはないだろう。
今まで積み重ねてきたのはお前だ。私じゃない」

「……それでもです」

兄は少しだけ目を細め、面白そうに息をついた。

「ふーん」

わかっていて聞いている顔だ。
兄は昔から、俺が何を言いたいのかすぐに察する。


「俺は……ティアナが好きです」

「それは知ってる」

即答だ。


「彼女が笑っていられることが、俺の最優先事項です。
だから俺は国王にはならない。
彼女は王妃になることを望んでいません」

「うーん、それはさ。
さすがに勝手というのでは?」

兄がこちらを見る。
その目は叱るでもなく、呆れるでもなく……ただ、兄らしい。

「そうです。俺は勝手です。
彼女が一番大切で、彼女と共にありたい。
そばにいたいけど……国王という座が邪魔なんです。

どうにかしてください」

言ってから、自分でも笑えてきた。
我ながら、随分勝手だ。

でも――
それでも、譲れない。