第5部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない


廊下に出ると、ユウリがすっと横に並んだ。

「お嬢様、よかったですね」

「え?」

「王妃にならなくて済みそうです」

「あー……そうだね」

「嬉しくないんですか?」

「いや、それはもう……雪の中を転げ回りたいくらいには嬉しいんだけど」

「やめてください。傷口開きます」

ユウリの冷たい視線が刺さる。
流石にそんなことはしないけど。

「なんか……上手く手を打たれたというか……なんだろうな」

「わかる!俺わかるよ!」
テオが勢いよく隣に割り込む。

「あいつ、うまーく兄に投げたよねー」

「そうですね」
セナが淡々と続ける。
「お嬢様の気持ちも尊重した上で丸投げしましたね」

「えー!王様ってかっこいいのにな!!」
レオが大声をあげる。

「レオちゃんは単純ね」
ルイが笑いながら首を傾げる。
「でも……いつからそんなこと考えてたのかしら?」

その瞬間、全員の視線が後ろのレイさんに向く。

レイさんは咳払いし、眼鏡をクイッと上げた。

「私にも正確な時期はわかりませんが……ただ、あの方は」

ちらりと私を見るレイさん。思わず小首を傾げる。

「“欲しい”と思ったものには、時間をかけて計画を練るタイプです。
そして、甘やかす時は徹底的に甘やかします。
ティアナ様が望まないもの、邪魔になるものは……まあ、排除するでしょうね」


「ということは……」
ルイが言う。

「最初から考えていた可能性はありますね」
ユウリが静かに告げた。

「え?」

「うわ、重っ!」
テオが叫ぶ。

「いや、お前が言うな」
セナが即ツッコミ。

「お嬢さん、愛されてますねー!!」
レオの明るい声が廊下に響いた。