第5部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない

「みんな揃っているね、邪魔するよ」

柔らかな声とともに扉が開き、アラン殿下が姿を見せた。
その瞬間、部屋の空気がわずかに引き締まる。
レイさんがすぐに立ち上がり、殿下のために席を整えた。

アラン殿下は軽く礼をして腰を下ろす。

ディランは兄の姿を確認すると、迷いのない声で告げた。

「俺ではなく、兄上に国王になってもらう。
今回、魔宝獣を撃退し、怪我人は出たものの……死人を出さずに済んだのは、間違いなく兄上のおかげだ」

その言葉に、アラン殿下は目を細め、口元を綻ばせた。

「弟に面と向かって褒められるとは、良い気分だな。」

本当に嬉しそうに笑う。
その笑顔を見て、ディランもどこか照れくさそうに視線を逸らした。

――ちゃんと話し合えたんだな。

そう思いながらディランを見ると、彼は私の視線に気づき、柔らかく頷いた。

「エメラルドの瞳にこだわっていたジョルジュもいないし、今回の功績を踏まえれば妥当な判断だろう」

ディランが淡々と告げる。

「はあー、なるほどねー。上手く逃げたねー」

テオがソファにだらしなくもたれかかりながら言う。

「まあ、そうともとれるね」

ディランは肩をすくめ、どこか吹っ切れたような表情を見せた。

ルイが小首を傾げる。

「でも、アラン殿下はそれでいいの?」

アラン殿下は即答した。

「ああ、可愛い弟のためだ。
それに私は、動き回って何かするよりも……椅子にふんぞり返って、私の指示でみんなに動いてもらう方が向いている。」

その言い方があまりにも堂々としていて、私は思わず苦笑してしまう。

「良い性格してますね」

「ありがとう」

アラン殿下は満足げに笑った。
その笑顔は、王としての器を自然と感じさせるものだった。