第5部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない

「だから今回の件は、ジョルジュが秘密裏に研究していた魔宝獣が暴走し、
ジョルジュはその研究に失敗して亡くなった……そういう形にする。」

淡々と語られる“偽りの真相”。
だが、それが国を守るための最善なのだと分かる。

「研究施設の崩落も、魔宝獣の暴走が原因……ですね。」

セナが確認するように呟く。

「そうだ。」

ルイが肩を落とす。

「どっちにしても……大変ね。
ディラン殿下が国王になるなんて。」

ディランが国王――
その隣に立つなら、私は王妃としての覚悟を決めなければならない。

そう思った矢先。

「いや、俺は辞退する。」

あまりにもさらりと言われて、思考が止まった。

「はああああああああ!?」

全員が揃って叫ぶ。

「今回……俺は祖父が長年企んできたことを見逃し、
まんまと乗っ取られた。」

ディランは肩をすくめ、苦笑すら浮かべていた。

「だけど、それは――」

思わず言いかけた私の声を遮るように、レオが叫ぶ。

「じゃあ誰が……」

その瞬間。

「入るよ。」

扉が開き、落ち着いた声が響いた。

「あ、アラン殿下……!」

ディランの兄が姿を現す。

ルイが目を輝かせ、手を叩いた。

「やだ、待って。すごい良い逸材がいたじゃない。」

ディランは満足げに頷く。

「そういうことだ。」

兄弟の視線が交わる。