第5部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない

「さて、とりあえず真面目な話だ。」

ディランが静かに息を吸い込み、皆の前に立つ。
その表情はいつもの軽さが消え、どこか覚悟を決めたような影が差していた。

「まずは……今回、俺のせいでみんなに迷惑をかけた。」

深く、深く頭を下げる。
その姿に、部屋の空気が一瞬止まった。

「……え?」

「ディランが……頭を下げた?」

みんながぽかんと目を丸くする。
普段の彼からは想像できないほど素直な謝罪だった。

「助けてくれて、本当に感謝してる。ありがとう。」

その言葉は、飾り気がなく、まっすぐだった。

「そんな素直に言われると、なんかむず痒いよね……」

テオが頬をかきながら苦笑する。

「まあ、でもどうにかなって良かったよな!!」

レオが勢いよく言い、場の空気が少しだけ和らぐ。

だが、ルイがすぐに現実へ引き戻した。

「でもそれはそれとして……今回の件、どう処理するの?」

ユウリも真剣な眼差しで続く。

「どこまで公にするおつもりですか?」

ディランは短く息を吐き、視線を落とした。

「……とりあえず、ジョルジュのことだが。
両親の死の真相、ガイルの件……これらは伏せるつもりだ。」

その声は低く、重かった。

「今さらジョルジュが関わっていたと話したところで、国民は混乱する。
それだけじゃない……動機を説明する必要も出てくる。」

動機――不老不死。
魔女の雫、紅血、そして……私の共鳴の力。

それらを公にするなど、到底できない。

「それは……よくないですね。」

ユウリが静かに頷く。

「ああ。俺の意図しないところまで広がってしまう。
ティアナの力についても触れざるを得なくなる。それは避けたい。」

守ろうとしてくれている――その気持ちが胸に刺さる。