第5部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない

ディランがレイさんに怒られ、部屋の空気が一瞬だけピリッと張りつめた。
その余波を受けた私はというと、ディランからそっと距離を置かれ、
アリスとテオに両脇を固められながら、まるで保護対象のようにソファへ座らされていた。

アリスは心配そうに身を乗り出し、テオは眉間に皺を寄せて周囲を警戒している。

「お嬢様、大丈夫ですか? あいつは狼ですよ!」

「油断もクソもない、ほんとに…」

2人の声が重なり、私は肩をすくめる。

「お嬢様…良い筋肉があっても、触ってはダメです」

「ユ、ユウリ…」

「特にそこの王子は危険ですからね」

ユウリの言葉に私は曖昧に笑うしかなかった。

「あはは…」

そんな空気をぶち壊すように、レオが勢いよく袖をまくった。

「お嬢さん、筋肉フェチ!? 俺のはどう!?」

光を受けて浮かび上がる腕の筋肉を、これでもかと見せつけてくる。

「レオちゃん、余計ややこしくなるからやめなさい!」

「ええー」

ルイが一喝し、レオが不満げに口を尖らせる。

そんな賑やかなやり取りの最中、


「とりあえず今後のことを話すのでは?」

セナの冷静な言葉に私は反射的に背筋を伸ばす。

「そうだったな」

ディランはそういいながら、
さっきまで怒られていたとは思えないほど涼しい顔で、
乱れた服を丁寧に整えていた。
その仕草が妙に落ち着いていて、逆に腹が立つほどだった。