第5部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない

背中をタオルでそっと拭う。

「痛くないですか?」

「ああ、大丈夫だ」

ディランの肩から背中へ、ゆっくりとタオルを滑らせていく。

「ねぇ、ディラン。前よりたくましくなりました?」

「お、よくわかったな。実は筋肉増量中だ」

「へぇー」

「君の好みが、レイやセナみたいに“筋肉質”だって聞いたからな」

「あー……まあ」

曖昧に濁す。
少し触ってみたい気持ちが、つい指先に出てしまう。

そっと、背中をなぞるように触れた。

「……テ、ティアナ?」

「あ、ごめんなさい。痛かった?」

「いや。くすぐったい」

その言葉に、思わずディランの背にぴたりと寄り添ってしまう。

「……どうした?」

珍しく声が揺れている。

「あったかいですね」

そう言うと、ディランが顔を赤くしてこちらを振り向いた。

「それは……煽ってるよね?」

「え?」

次の瞬間、ディランに手を取られ、軽くベッドへと横にされる。

押し倒された、というほど強引ではない。
ただ、真正面から見上げる形になってしまい――

(…鍛えている筋肉だ)

包帯の巻かれた傷は痛々しいのに、
それでも彼の体は引き締まっていて、目を奪われる。

そんなことを呑気に考えていると――