第5部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない

「ディラン、大丈夫?」

「ああ」

「大丈夫じゃないです。
肋骨が何本も折れてますので、絶対安静なんですよ…本当は」

レイが眼鏡の奥から鋭い視線を向ける。
その言葉に、テオとセナがしれっと横を向いた。

「ディラン、はやく戻ろ。ゆっくりしよ?」

「そうだな」

ディランは優しく笑い、私の頭をそっと撫でる。
その手つきがあまりに自然で、胸がじんわり温かくなる。

ディランを支えようと手を伸ばした瞬間、
セナとテオがさっとディランの両脇を固めた。

「おい、なんだこれは」

ディランが顔をしかめる。

「乗っ取られ王子の護衛でーす」

「多少の罪滅ぼしということで」

テオとセナが同時に口を開く。

「歩けるが」

「お嬢様も怪我されていますから。
我々が支えますので」

「そうそう」

2人の言葉に、ディランは深いため息をついた。

「すみません、レイさん」

私がそういうと、

「いえいえ、楽しい方たちですね」

レイが柔らかく笑い、少しだけ緊張がほどける。