第5部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない


「お嬢さまー」

ふいに、ぎゅーっと優しく後ろから抱きしめられる。
温かい腕が腰に回り、背中に触れる体温に思わず息が止まった。

「テオ…」

「またお前は…」

セナがため息をつく。

「いいでしょう?
あいつも、ルイもレオもさ、お嬢様にくっつきすぎ。
セナだって、さっき頭撫でてた!」

「…副団長と呼べ」

「あーそうだった」

テオが緩く笑う。その無邪気さに、少しだけ心が和む。

「お嬢様、ほんと無事でよかった。
怪我させちゃって、ごめんね」

耳元に落ちる声は、いつになく優しくて。
抱きしめられたままでは、心まで溶けてしまいそうだった。

「ううん。本当にありがとうね。
2人が一緒に追いかけてきてくれて、良かったよ」

「そりゃあね!
お嬢様の行くところは、俺どこだってついていくから!」

「ふふ…」

「だから、この先も…ずっと一緒ね」

耳元で囁かれた瞬間、胸がドキッと跳ねた。
息が触れた気がして、思わず肩が震える。

「おい…離れろ」

低い声が割り込む。

「あれー、乗っ取られ王子?もう動けるの?」

「まあね…
っというか、その呼び方やめろ」

ディランがレイと一緒に現れる。
まだ痛むはずの身体で歩いてくる姿に、胸がきゅっと締めつけられた。

よく歩けるな…
無理してるのが、見ているだけでわかる。

テオがゆっくり腕をほどいたので、私はディランに一歩近づく。