第5部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない

「ねぇ、お嬢様。しばらくここにいるって聞いたけど、そうなの?」

椅子に座る私の前で、テオがしゃがみ込み、見上げるようにして問いかけてくる。

「うん、そのつもり。雪も降りそうだし、復興も手伝わないとね」

魔宝獣が暴れた跡も残っている。
ジョルジュの後処理だって山ほどある。
やらなきゃいけないことは、まだまだ多い。

「ふーん」

短く返事をするテオ。

「協力してくれる?」

「それはもちろん。お嬢様のお願いだからね」

迷いのない声に、思わず笑みがこぼれる。

「ありがとう、テオ」

するとひょこっとレオがでてくる。

「ねぇ! お嬢さん!
ご飯まだでしょ!? みんなで食べようと思って呼びに来たんだ!」

相変わらず声が大きい。部屋の空気が一気に明るくなる。

「そうだったんだ!」

そういえば朝方寝て、起きたのは昼すぎ。
というか、もうおやつの時間くらいだ。

「キッチンと食事する部屋も借りてるから行こ!!」

レオが嬉しそうに私の手をつかむ。
その手は温かくて、引っ張る力も容赦ない。

「ちょっとレオちゃん!
ティアナちゃん怪我してるんだから、無理させないでよ」

ルイが慌てて近づき。
眉をひそめて、私の足元を心配そうに見つめた。

「――あっ、そうだった! ごめん!
俺、おんぶする??」

レオが慌てて手を離し、今度は背中を向けてしゃがみ込む。
その動きがあまりに急で、思わず笑いそうになる。

「はあ!? それするのは俺だから」

テオがレオの肩をつかんで引き戻す。
真剣な顔なのに、どこか子どもっぽい。

「いや、テオはヒョロいから」

「はあ!? 誰がヒョロいって!?」

テオの声が一段高くなる。
二人の言い合いが始まると、部屋の空気が一気に騒がしくなる。
でも、そのやり取りがどこか心地よくて、胸の奥が少し温かくなった。