「ティアナ……本当にありがとう」
「はい」
ディランの声は、静かで柔らかかった。
「君が呼んでくれたから、戻ってこられた。
もう俺は……君なしでは生きていけないな」
「そんな大袈裟ですよ」
私は軽く笑って返す。
けれど次の瞬間、ディランの腕の力がぐっと強まった。
「大袈裟じゃないよ。
君が大切で……どうしようもなく愛おしいんだ」
「……そんな恥ずかしいことを」
「いいだろう? 今は二人きりだ」
「そうですけど……」
ディランはふと、声の温度を落とした。
「ジョルジュは……俺のことを、孫として、次期王として期待してくれていると思っていた。
違和感に気づきながらも、そう思い込んでいたんだ」
その横顔は、夜の名残を抱えたままのように見えた。
「真実を聞かされて……ティアナの切られた髪を見て……心が折れたんだ」
胸が痛む。
あの瞬間のディランの絶望が、今も残っているのだ。
「大切なものが俺を弱く、脆くするんだと……身体を奪われたときに、そう思ってしまった」
「それは……違います!」
思わず顔を上げる。
ディランは私を見つめ、ゆっくりと首を振った。
「ああ、違う。
人は……大切なものができるほど強くもなれる。
それを君が教えてくれたんだ」
その言葉は、夜明けの光のように胸に染み込んでいく。
「本当にありがとう」
そっと、額にキスが落ちた。
「ディラン……」
「なんだい?」
「私も……もっと強くなります!」
「これ以上?」
ディランはくすっと笑う。
「さっき、ユウリにも言われました」
「ふふ……なら、一緒に強くなろう。
そして、支え合っていこう」
「はい」
「少し眠ろうか」
「はい」
ディランは私を抱き寄せたまま、優しく囁く。
「次、目が覚めたときも……ずっと一緒だ。
おやすみ」
その声が耳に落ちた瞬間、
夜明けの光に包まれるように、瞼が静かに閉じていった。



