第5部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない

夜明けが差しはじめ、王宮の騎士団たちが後片付けに追われる中、私とディランは静まり返った王宮へ戻った。
今日はひとまず、王国に泊めてもらえることになっている。

「ティアナ様、お部屋をご用意しております」

レイさんに案内され、侍女たちが用意してくれた湯で身体と頭を洗う。
傷口が痛み、思わず声が漏れた。

「し、しみる……」

用意されていた絹のワンピースに袖を通す。
指先が触れるたび、さらりとした感触が心地よい。

鏡に映る自分の髪は、肩で揺れるすみれ色の短い髪。
見慣れない姿に、胸の奥がじんと熱くなる。

――本当に、終わったんだ。

ベッドに身を投げ出すと、ふわりと柔らかさに包まれた。
緊張がほどけていく。

(よかった……ほんとに)

でも、あのときは危なかった。
セナとテオが来てくれなかったら、きっと――。

「弱いな……わたし」

ぽつりと漏れた言葉が、静かな部屋に落ちる。

そのとき。

コンコン、と扉を叩く音が響いた。