ディラン side
心配のあまり、気づけばラピスラズリ伯爵家の前まで来ていた。
だが――合わせる顔がない。
それでも、無事でいるかどうかだけは、この目で確かめたかった。
屋敷の様子を遠巻きに窺っていると、見慣れた姿が視界に入る。
――セナだ。
向こうもこちらに気づき、わずかに目を細めた。
「殿下……」
「やあ、セナ」
「……なんで、そんなコソコソしてるんですか?」
言葉は穏やかだが、視線は容赦なく鋭い。
「……」
「合わせる顔がないのは、まあ……わかりますけど」
「え?」
「少し同情しますよ。……少しだけ」
ぽつりと刺すように言われ、思わず頭を抱えた。
――知られている。
全部、だ。
「ティアナは……元気か?」
「ここまで来たんですから、自分で聞いてくださいよ」
セナは小さくため息をつく。
「しかし……」
「そんなことしてると、本当に婚約破棄されますよ?」
「それは絶対に却下だ!」
反射的に声が出た。
セナは一瞬だけ目を丸くし、それから肩をすくめる。
「……それにしても、大変なことになりましたね」
「ああ。すまない。俺の祖父が……」
言葉を選びながら、苦く吐き出す。
「殿下。お嬢様は、また飛び込もうとしてますよ」
「ああ、わかってる」
「……そうですか」
短い会話。
だが、セナは視線を逸らさず、まっすぐこちらを見ていた。
「だから――これを渡してくれ」
そう言って、俺は懐から封筒を取り出した。
心配のあまり、気づけばラピスラズリ伯爵家の前まで来ていた。
だが――合わせる顔がない。
それでも、無事でいるかどうかだけは、この目で確かめたかった。
屋敷の様子を遠巻きに窺っていると、見慣れた姿が視界に入る。
――セナだ。
向こうもこちらに気づき、わずかに目を細めた。
「殿下……」
「やあ、セナ」
「……なんで、そんなコソコソしてるんですか?」
言葉は穏やかだが、視線は容赦なく鋭い。
「……」
「合わせる顔がないのは、まあ……わかりますけど」
「え?」
「少し同情しますよ。……少しだけ」
ぽつりと刺すように言われ、思わず頭を抱えた。
――知られている。
全部、だ。
「ティアナは……元気か?」
「ここまで来たんですから、自分で聞いてくださいよ」
セナは小さくため息をつく。
「しかし……」
「そんなことしてると、本当に婚約破棄されますよ?」
「それは絶対に却下だ!」
反射的に声が出た。
セナは一瞬だけ目を丸くし、それから肩をすくめる。
「……それにしても、大変なことになりましたね」
「ああ。すまない。俺の祖父が……」
言葉を選びながら、苦く吐き出す。
「殿下。お嬢様は、また飛び込もうとしてますよ」
「ああ、わかってる」
「……そうですか」
短い会話。
だが、セナは視線を逸らさず、まっすぐこちらを見ていた。
「だから――これを渡してくれ」
そう言って、俺は懐から封筒を取り出した。



