アラン殿下が一歩前へ出て、場を引き締める。
「さて。まだすべきことはある」
その声に、騎士たちの背筋が一斉に伸びた。
「動ける騎士は負傷者の確認と搬送だ」
「はい!」
アレン、ロベルト、ルーク団長、オリバー副団長、エリックが立ち上がる。
アラン殿下は次々と指示を飛ばす。
「ルーク団長は迷宮周辺の安全確認を。
オリバー副団長は警戒線の構築を。
アレン、ロベルトは負傷者の搬送を手伝え。
エリックは医療班の誘導だ」
「了解!」
「任せてください!」
「すぐに動きます!」
騎士たちはそれぞれの役割へ散っていく。
仲間たちもそれに続くように動き始めた。
「ほら動くわよ!」
ルイがレオの腕をつかんで引っ張る。
「えーもう!?」
レオが絶叫しながらも、渋々立ち上がる。
テオは肩を回しながら、ルーク団長の後を追う。
「はぁ……結局働くの俺らじゃん」
「文句言わないの」
ルイが呆れたように返す。
ユウリは静かに医療班へ向かい、
ロベルトはアレンと共に負傷者の搬送へ走った。
その時、セナがディランの前に立つ。
「殿下……」
「セナ」
「その怪我……謝りませんから」
「ちょっ、セナ!!」
私は慌てる。
だがディランがふっと微笑んだ。
「ああ、それでいい」
「お嬢様はゆっくりしててください」
その優しい声に、胸が温かくなる。
そこへレイが眼鏡を押し上げながら声をかけた。
「セナさん、こっちの通路の確認お願いします」
「了解です」
セナが軽やかに駆けていく。
わちゃわちゃと騒がしかった声が、
少しずつ遠ざかっていく。
アレンとロベルトの慌てた声も、
レオの文句も、
ルイの叱責も、
テオのため息も、
セナとユウリの優しさも――
全部、庭の奥へ消えていった。
やがて――
庭には、私とディランだけが残った。
風が静かに吹き抜け、
草の匂いと、戦いの余韻だけがそこにあった。
ディランは隣で、ゆっくりと息を吐く。
「……静かになったな」
「ええ」
2人だけの時間が、ようやく訪れた。



