「そちらは、大丈夫でしたか?
魔宝獣が出ていたようですが」
ユウリが落ち着いた声で問いかける。
「ああ、こっちは大丈夫だ。
負傷者はいるが、死人は出ていない」
アラン殿下の言葉に、胸の奥がふっと軽くなる。
「よかった……」
思わず息が漏れた。
緊張がほどけ、身体の力がゆっくり抜けていく。
アラン殿下は、仲間たちの騒がしさを見守りながら、
ふっと優しく笑った。
「……本当に、良い仲間に恵まれているな、ディラン」
「はい。……自慢の仲間です」
ディランが誇らしげに答える。
「ディラン」
「兄上」
2人の視線が静かに交わる。
「……終わったな」
「はい」
「よくやった」
その言葉に、ディランは目を丸くした。
驚きと、どこか信じられないような表情。
私はそっとアラン殿下に目配せする。
殿下はふっと柔らかく笑った。
「ディラン。お前を誇りに思う」
「……ありがとうございます」
アラン殿下はゆっくりと歩み寄り、
弟の肩をそっと掴んだ。
そして――
そのまま強く抱きしめる。
「……もう一人で背負わせない」
ディランの肩がわずかに震えた。
「……はい」
アラン殿下は弟の背を何度も叩きながら、
押し殺した声で続ける。
「本当に……よかった。
生きててくれて……」
その言葉に、ディランは目を閉じ、
静かに息を吐いた。
そしてようやく、肩の力を抜き、
柔らかく笑みを返す。
アラン殿下は次に私へ向き直る。
「ティアナ嬢」
「はい」
「弟を……ありがとう」
その言葉は、静かで、まっすぐで、温かかった。
「……はい」
私は深く頷いた。
崩れゆく迷宮からの脱出、
激しい戦い、
そして再会。
すべてがようやく、
ひとつの終わりを迎えたのだと実感した。



