第5部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない


アレキサンドライトの光に貫かれ、
化け物と化した影が悲鳴を上げながら崩れ落ちていく。

赤黒い宝石が砕け、
黒い泥のような質量が地に溶けていく。

その中心で――
ジョルジュ陛下の影が、ゆっくりと形を失っていった。

「……あ……あぁ……」

かつて王であった男の面影が、
崩れ落ちる砂のように消えていく。

ディランはその姿を、ただ静かに見つめていた。

そして――
冷たく、凍てつくような声で告げる。

「貴方を……俺は絶対に許さない」

影が震えた。

「両親を殺したことも。
ティアナを利用しようとしたことも。
俺たちの人生を踏みにじったことも――全部だ」

その声音には怒りではなく、
静かな決別だけがあった。

「俺は……二度と貴方を祖父とは思わない」

ジョルジュの影が、最後の形を保てず崩れ落ちる。

「や……め……ろ……ディ……ラ……」

その声が消えた瞬間、
影は完全に霧散した。

静寂が訪れる。

ディランは剣を下ろし、
深く息を吐いた。

その横顔は、
少年ではなく――
王としての覚悟を宿した青年のものだった。

私はそっと彼に近づく。

ディランは私へ視線を向け、
ほんの少しだけ、柔らかく微笑んだ。

「……終わったよ、ティアナ。
ありがとう」