第5部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない

「我が剣に従え――アクアマリン。
流れを凍てつかせ、暴走を鎮めよ」

セナの刀身が氷水の輝きを帯び、
空気そのものが冷却されていく。

荒れ狂っていた魔力の流速が、確かに鈍った。

「紅く、鋭く――我が想いに応えよ、スピネル!
迷いを断ち、前を切り拓け!」

テオの刃が深紅に燃え上がる。
意志そのものが炎となり、前線を押し返した。

「燃えあがれ――ペリドット!
恐れを焼き払い、道を拓け!」

レオの大剣が爆炎を纏い、
轟音とともに魔力の壁を打ち砕く。

「美しく、惑わせ――ローズクォーツ。
その心、甘き夢に沈めなさい」

薔薇色の光が舞い散り、
幻想の花弁が宙を満たす。
敵の視界が歪み、動きが鈍る。

「理を整えよ――フローライト。
混沌を律へ、歪みを円環へ」

淡紫の光が円を描き、
暴走する魔力の流れを強制的に整えていく。

「静寂を保て。惑いを断て――アメジスト。
恐怖も雑音も、ここには要らない」

レイの剣が静かに振るわれ、
音も、恐慌も、戦場から削ぎ落とされていく。


そして――
ディランが私の隣に立つ。