第5部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない

ディランが私の腕の中で、ゆっくりと目を開けた。

「……ティアナ」

弱々しい声。
けれど、エメラルドのその瞳はもう迷っていない。

「ありがとう、ティアナ。
まるで君が王子様みたいだな」

私は軽く笑い返す。

「そうだね。
では――お姫様、まだ終わってませんよ」

手を差し出すと、ディランは苦笑しながらその手を取った。

「その言い方は勘弁してくれ」

2人が立ち上がった、その瞬間――
床の影が再び伸び、ディランの足元へ絡みつこうとする。

ジョルジュが苦悶の声を上げた。

「や……やめろ……!
まだ……終わって……ない……!」

影がうねり、再びディランを引きずり込もうと迫る。

その時――

「待ってぇぇぇ!!
俺たち完全出遅れ組だよ!!」

「レオちゃんのせいでしょ!
罠にかかりまくるんだから!!」

レオとルイが、息を切らしながら駆け込んできた。

レオは大剣を肩に担ぎ、叫ぶ。

「いやいや! あれは罠が悪い!
俺じゃない!」

ルイが容赦なくツッコむ。

「罠に3回も引っかかる人が悪いに決まってるでしょ!」

セナとテオが同時にため息をつく。

ユウリは静かに言った。

「……まあ、来てくれただけありがたいですが」

レイも頷く。

影が再び私たちへ迫る。

レオが大剣を構え、叫ぶ。

「燃えあがれ! ペリドット!」

大剣が赤熱し、爆ぜる火花が炎となって刀身を包む。
熱気が戦場を揺らし、影を焼き払うように押し返した。

続いてルイが優雅に剣を掲げる。

「美しく、酔いしれなさい――ローズクォーツ」

淡い薔薇色の光が剣を包み、
舞う光の粒が幻想的な残像を描く。
その軌跡は影を惑わせ、動きを鈍らせた。

レオの炎とルイの光が重なり、
影の進行を完全に止める。

私は剣を握り直し、前へ踏み出した。

「ディランは……もう渡さない」

蒼い光が刀身に宿る。