第5部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない

「私の手を取って。
ここまで私を連れてきたんだから……責任とってよ」

少年は震える声で問う。

「僕で……いいの……?
君を……不幸にするかもしれないのに……」

「貴方じゃなきゃ、嫌なの。
不幸になんてならない。
幸せになるために、貴方と手を取るの」

その瞬間、結界が音もなく砕けた。
私は迷わず彼の手を握った。

蒼い光が弾け、霧が裂け、空気が震える。
ディランの魔力が目覚めるように溢れ出す。

光が収まったとき、そこに立っていたのは――

大人のディランだった。

いつもの背丈。
いつもの温もり。
そして、エメラルドの瞳が、
涙を浮かべながらも、まっすぐ私を見つめていた。

「……ティアナ。
ごめん……
ずっと……怖かったんだ……」

その声は震えていたけれど、確かに“彼”の声だった。

私は笑った。

「ほんとですよ。
戻ってくるの、遅いんですから」

ディランは私の手を握り返し、
背後に迫るジョルジュの影を鋭く睨みつけた。

「もう……奪わせない」

精神世界が震え、
ディランの魔力が完全に覚醒する。

ティアナの言葉が――
彼を救い、取り戻したのだ。