「ジョルジュ陛下……話があります」
迷いなど一片もなく、俺は祖父の私室へ踏み込んだ。
「なんだ、ディラン。ずいぶん早く戻ったな」
相変わらずのんびりとした声。
まるで、城で何も起きなかったかのように。
「……ティアナを危険に晒しましたね」
視線を逸らさず、真正面から睨みつける。
「危険? まさか」
陛下は肩をすくめ、軽く笑った。
「彼女が、自分で対処してくれただけだ」
「――そう仕向けたのは、あなたでしょう!」
喉の奥から、氷のように冷たい声が漏れた。
「うむ。しかし、あの力……実に見事だった」
「彼女を国のための道具にするつもりなら、やめてください」
一歩も退かず、言葉を叩きつける。
「ふむ」
祖父は、じっと俺を見据えた。
「……そこまで、彼女が大切か」
「当たり前です」
迷いなど、最初からなかった。
「……わかった」
陛下は小さく息を吐いた。
「ただ、あの娘は嗅ぎ回りすぎる。大切に思うなら――お前がきちんと囲っておけ」
そう言って、緩く笑う。
……この人は。
「わかりました」
俺は一礼すらしなかった。
「彼女に、これ以上何かするなら――」
視線を逸らさず、静かに言い切る。
「私は、あなたを許しません」
王に向けるべき言葉ではない。
それでも、引く気はなかった。
そうして俺は踵を返し、部屋を後にした。



